スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--:-- | スポンサー広告 | edit | page top↑



雪はおれのことを「光」だと言った。
ねえ、アヤが居てくれてよかった。
アヤがいなければあたし、きっと一歩も歩けなかった、と。

でも、俺はあいつにそう言われる度に、胸に走る鋭いいたみを感じていたんだ。

違うんだ、雪音。
おれは光なんかじゃない。
お前は知らないだけなんだ。

父さんも母さんも、どうしてあれほどお前の事を慈しんで育てたと思う。
どうして俺が、お前にここまで狂ってしまったと思う。

純粋で、弱くて、汚れるのを嫌って、いつも自分の空気だけを吸って生きている。
きれいな雪。


本当は──


***


清浄な空気の下で、この街はいつも二重の景色を持つ。
こものかけられた平屋の屋敷。その脇を、轟音を立てて通り過ぎて行く鉄の俥(くるま)。
ずっしりと咲き誇った桜がかこむ白亜の城の、その背景に霞む灰色の街並み。
人々は急ぎ足で、あるいはゆったりと、踵の高い洋靴を履いている時もあれば、草鞋をつっかけている時もある。

不思議な街だ。
浸っていると、どちらの景色が本当の今なのかさっぱりわからなくなる。
自分という人間は希薄になっていくような、そんな独特の空気を持つ街だった。
とても遠い所、彼女から遠く離れた場所。

だから、選んだ。







10:54 | ブログ小説 | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑
止まらん | top | ちかごろ

comments

post a comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackbacks

この記事のトラックバックURL:
http://odetojoy.blog81.fc2.com/tb.php/736-42503880
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。