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こういうの


書きたい。
王道・少年漫画風。



──星導師、という。

 体のどこかに星を持ち、何がしかの異能を持つ者たちのことを。
 彼らは遠い昔に神々たちと契約を交わし、その役目と力を授けられた。
 すなわち、この世のありとあらゆるものに宿るとされる八百万の神、彼らを守るという役割と、そのために必要な異能力を。

 世には様々な闇が潜む。
 そしてそれらの殆どは、人の心から生じたものだ。
 憎しみに悲しみ、狂気、嫉妬、差別意識。
 人の弱い心がそういった感情に乱れた時、本来ならば相容れない存在である「悪」や「魔」が取り憑いて、真の「闇」として成長してしまうのだ。

 神々は闇を厭う。
 光が喰われてしまうからだ。
 ゆえに、星導師たちをこの世に送り、闇を祓って光を取り戻すようにと命じられた。

彼らは決して歴史の表に顕れる存在ではない。
ひそやかに、だが着実に、その「星」の力と役割を後世へと伝えてきた。
どんな名声も得られなくとも、彼らがこれまでに救ってきた命は数かぞえきれない。
その存在は、光の無い闇夜でも人々を照らし、導く、まさしく星そのものなのだ。
 そしていつからか、彼らを知る者は、その在り様をこう呼ぶようになった。
 星を持って闇を祓い、世に光を導く者たち、つまり──

──星の導師、と。

***

「何度言ったらわかるんじゃああ!!」

 ババアの怒号が飛んだ。
 同時に木刀が振り下ろされて、俺は慌てて床を転がる。
 磨き抜かれた白木の床は、こう言う時だけは便利だ、ほんとに。

「っぶねーな、何すんだよクソババアっ!」

 体勢を立て直すと、俺はすかさず印を組んだ。
 両手を宙に翳し、打ち合わせ、指を立て、複雑な形に折る。
 そして口の中で早口に唱えた。
 星、我、呼、応。
 ──我、ここに星を持って命ずる。

「応じろ、黒晶っ!」

 呪が完了すると同時に、俺の右手から、黒い閃光がほとばしり出た。
黒き賢狼、俺の召喚獣だ。
 艶やかな絹の毛並みに、蒼穹の瞳を持ち、宙でくるりと展開すると、まっさかさまにババア目がけて飛びこんで行く。
 まっ白な頭に、同じく白い袴姿に身をつつんだ小柄な老婆は、しかし、眉ひとつ動かさなかった。
 フンと鼻を鳴らし、木刀を持った手をわずか動かすと、飛びかかる巨大な狼を何と片手でなぎ払ってしまったのだ!

「げっ……」

 俺はさすがにビビってしまった。おいおい、マジか。
 俺の黒晶がこうもあっさりと──

「──って、うわー!!」

 ババアの手腕に気を取られていた俺は、そのババアに弾き返された黒晶が、俺目がけて飛んでくるのに気付かなかった。
 結果、ゆうに2メートルは越す体格の狼もろとも吹き飛ばされて、道場の壁に叩きつけられる羽目となった。

「……がっ……」

 は、と俺は口を開けた。
 背中から叩きつけられて、あまりの衝撃のせいで呼吸ができない。
 口は開けては見るものの、肺に空気が取りこめないのだ。
 黒晶が慌てたように飛び跳ねて俺から離れた。

『蒼路! 悪い、大丈夫か!?』
「……だいじょうぶく、ねえ……っ」

 ずるずると崩れ落ち、俺は床に倒れ伏した。
 天井を見上げながら、必死に息を求めて口をパクパクさせていると、やがてババアの顔が視界に映った。
 あいかわらずの仏頂面でいやがる。

「フン、未熟者の分際で。私に挑もうなどと千万年早いわっ」

 そして言うが早いか俺の脇腹を蹴り上げる。
 俺はもんどり打った。
 黒晶が凶暴な牙を剥いて威嚇したが、ババアは全く気にしなかった。

「何度も言っておるが、初心者のお前は術よりもまず、体を鍛えることが先決なんじゃ! でなければ星の力に負けて、いつかは必ず身を喰われる!」
「……なんでだよ……深紅は……」

 ようやく細く息が吸えるようになってきたが、今度はわき腹が痛かった。
 涙目になって見上げる俺を、ババアは冷たく見下ろした。

「深紅とお前を一緒にするでない。あの子は天才じゃ。それに、生まれた時から私が修行を施しておる。」
「けど!! 深紅は俺を強いって言ってくれたんだよ!!」
「……うぬぼれるでない!!」

 再び怒号が飛んだ。
 脳天に思い切りチョップが振り下ろされる。
 今度こそ涙が出て、黒晶が心配そうに顔を覗き込んできた。
 良いか、と、ババアは言った。

「確かにお前の星は強い。お前の歳で、しかも修行を始めて一月で、このようにしっかりとした召喚獣を呼び出せる者はそうそうおらん。しかしあくまで“星”は持って生まれた才能でしかない。お前自身が強いわけではないということを肝に銘じよ!」

 俺は言い返せなかった。
 悔しくて仕方がなく、唇を噛んでうつむく。
 ババアはしばらく黙っていたが、やがて息を吐くと遠ざかって行った。
 道場の扉が閉まる音を確認してから、黒晶がおずおずと俺の体に前足を触れた。

『蒼路、へーきか?』

 黒晶の声はやわらかい。
 深みがあって落ち着いているのに、俺の体の中から響くような、そんな不思議な声をしている。
 俺はその声にすこしばかり慰められて、かすかに顔を上げる。
心配そうに俺を覗き込む蒼い瞳と眼が合った。

「……ちくしょう。あのババア、いつかぜってー締めてやる」
『そうだ、その意気だぜ、蒼路。』
「怪我しなかったか?」

 手を伸ばして黒晶のつややかな黒い毛並みに触れる。
 見た眼よりもほんの少し固いその毛並みは、だがとてもなめらかで、ほとんどの妖怪は触れることすらできない代物だ。
 彼が俺の召喚獣になってくれたことを、俺はほんとうに感謝している。

『怪我なんてするもんか。さ、修行、続けようぜ』

 黒晶は眼を閉じると、俺の体に鼻面を甘えるようにこすりつけた。
 俺も彼の頭を撫でて、頷く。

「そうだな。」
『……ところで蒼路。言いにくいが、あのババア、置き土産を置いて行ったぜ』
「へっ?」

 俺は面喰った。
 黒晶が突然立ち上がり、体を伏せると、低く唸り始めたのだ。
 彼が厳しい視線で睨みつける先には、固く閉ざされた道場の入り口があるだけ。
 だが、俺もやがて気がついた。
 空気がいやな感じにざわざわと、波立っている。
 部屋のあちこちに、さっきまでは存在しなかった「闇」が息づきはじめていた。まちがいない、これは。
 ──魔の気配。

「……あんのクソババアっ!」

 俺は叫ぶと飛び起きた。
床に片膝をつき、右手をすばやく宙に構える。
 みるみるうちに闇が濃く、渦を巻いていく。
 部屋中に、キチキチと虫が鳴くような嫌な音がしたと思ったら、やがて無数のコウモリのような生き物が現れていた。
 魔鳥だ。どこにでも居るザコだが、こう数が多いとかなり面倒くさい。
 
「何が、初心者はまず体を鍛えることから、だよ!」
『四の五の言ってる場合じゃないだろ、行くぞっ』

 叫ぶなり黒晶は跳び、俺の眼前に迫っていた一匹を噛みちぎった。
 俺も援護する。
 修行を始めてまだ一カ月だが、できることは召喚の他にもあった。

「──星、我、降、希!」

 左手の指先で宙に印を描くと、俺は、右手の“星”から剣を取りだし、振り下ろした。

*** 

全ての魔鳥を倒しつくした後には、さすがにがっくり来てしまった。
 何しろ、黒晶を召喚しているだけでも疲れるというのに、加えて剣まで取りだしてしまったのだ。
 黒晶も剣も“星”の中に戻し、道場から何とかして這ってでていくと、庭の方で他の修行者たちが何やら人だかりを作っていた。
 俺はぜいぜいしながらも顔をあげてそちらを見やり、ああ、と唸った。
 深紅だ。
 どうやら実戦中らしく、一匹の妖弧を相手に軽やかに庭園を飛び回っていた。
 着物なんていう動きにくい服装をしているくせに、素早い妖弧の動きに負けずとも劣らない動きをみせて、その上、両手で別々の術を使うという凄技まで行っていた。
 利き手の右手からは、あいつの召喚獣である白夜。
 もう片方の左手では五芒星の陣を呼び出し、どうやら空間干渉の術を試みているようだ。
 緋色の唇が呪を唱える。
 同時に妖弧は深紅めがけて飛びかかったが、その鋭い牙が深紅の体に突き刺さることはなかった。
 なぜなら、まず白夜が、尖った嘴でその体に噛みつき、動きを止めたから。
 そして、深紅が呼び出した五星陣をそんな狐めがけて振り下ろしたから。
 ──結果、妖弧は跡かたもなくその場から消え去ったのだ。

 廊下に這ったままで、俺はうーんとその様子を観察していた。
 やっぱり、あいつは格が違う。
 二つの術を同時に操る事ができるのも凄いが、何よりも、俺と同じ年で空間術を操る事ができるということが信じられなかった。
 五種類ある星導師のタイプの内で、空間師──つまり、空間を支配する術者──は最も珍しい星導師だと言われている。
 理由は簡単だ。
空間術は努力の有無にかかわらず、その才能を持って生まれなければ絶対に身につけることのできない技だから。
 同時に、才能を持って生まれたとしても、修行がめちゃめちゃ難しい術だから。
 ……だが深紅はあの通り、いともやすやすと空間術を操っている。
 それだけではない。
 あいつは召喚術も扱えるし、同時に陰陽術も使える。
 さらには治療師としての腕にも長け、俺のように、武器を呼び出して戦う事も出来るのだ。
 つまり深紅は星導師として、全ての才能を持ち合わせているということなのだ。
……それも、俺と同い年で。

「……けっ。」

 俺はしばらく廊下に伏せて深紅の様子を見ていたが、やがて飽きて、ずるずるとほふく前進を始めた。
 ババアから寝場所として割り当てられている部屋まで辿りつくと、なんとか片手でふすまを開けた。
 部屋の中にはいつでも寝られるようにと布団が敷かれている。
 俺はそこに横たわると、思いっきりため息を吐きだした。

「あー、疲れた……」

*** 

 眠い。超眠い。
 けど、眠る前にちょっとしたご説明だけしておこう。

 まず、申し遅れたが俺の名前は高村蒼路。
 たかむら、そうろと読むのだ。
 都内の中学に通う中学生で、一月前から星導師になる修行をはじめたばかり。
 ちなみにそもそも星導師とは──この右手のように、体のどこかに星を持つ人間のことである。
 星、すなわち、五芒星のかたちの傷。
 これを持って生まれると、前述した五つのタイプの内いずれかの力を宿しており、訓練によって星導師になることができるのである。
 そして星導師の役割は、魔と戦い、世の闇を祓うこと。
 戦う相手は妖怪から悪魔、時としては悪霊まで、色々だ。
 俺はまだ修行をはじめて魔もないからよくわかんないけど、星導師は世界中にいると聞いた。

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